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配管保全のお悩み ②修繕積立金の不足

2020年4月5日
この記事のカテゴリー : 修繕積立金・専有部の取り扱い

著者:配管保全センター㈱ 代表取締役 藤田崇大

大規模修繕で必要のない工事に多額の修繕積立金が使われている

  • 大規模修繕

  • 一般的なマンションでは長期修繕計画に則って、12年~15年に1度、主に外壁の修繕や屋上の防水のやり直し、エレベータの交換といった大規模修繕が行われています(国交省:長期修繕計画作成ガイドライン)。良心的な管理会社の場合は別ですが、「長期修繕計画表=管理会社の売上予定表」と陰でささやかれるように、管理会社の言われるままに多額の費用をかけて大規模修繕が行われることが多いといえます。
    たとえば、大規模修繕で実施する外壁の塗り替えを例に取ると、賃貸マンションではそれほど行われませんし、オフィスビルではほとんど行われない場合もあるのに、分譲マンションで頻繁に行う必要があるのでしょうか?
    また大規模修繕を行う理由として、不具合や故障が起きてから「事後保全」するよりも、事故が起きないように「予防保全」するほうが安くつくからと言われますが、必ずしもそうとは限りません。なぜなら、不具合の起きていない部分も含めてすべてやり直す「予防保全」よりも、不具合が起きてからその部分のみを改修する「事後保全」のほうが、よほど修繕積立金を節約できるからです。

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大規模修繕の実施で修繕積立金が不足して大幅値上げへ

1回目の大規模修繕実施後に、2回目以降の大規模修繕費用の不足が明らかになり、理事会から修繕積立金の大幅値上げが議案に出されて総会が紛糾するケースが多く見受けられます。値上げの合意が得られない場合、2回目の大規模修繕はかろうじてできても、3回目以降はなかなか実施できなくなります。また、業者から勧められるがまま早めに大規模修繕を実施して無駄遣いを重ねると、修繕積立金の大幅な値上げが避けられなくなります。周辺のマンションよりも修繕積立金が高ければ、「マンションを売りたくても売れない」「売却額を相場よりも下げしないと売れない」状態になります。築40年、50年を過ぎたあたりでは、相続放棄される部屋が続出して、最終的にマンションのスラム化が深刻な問題になることが予想されます。
見えないが確実に忍びよるマンション修繕積立金の不足要因
住宅金融支援機構「マンションの価値向上に資する金融支援の実施協議会」の今年度の取り組み報告 (修繕積立金シミュレーション(2020年6月無料公開予定)、将来の検討:積立金保証制度・区分所有者向けリバースモーゲージ・貸付債権譲渡スキーム 等について記載)

また、築40年、50年以上のマンションで、給水管・給湯管の交換工事ができないケースが多々あります。工期と費用がかかるのがその理由ですが、給水管・給湯管の交換工事を安くしようと思えばそれなりの方法もあります。専有部の給水管・給湯管の交換では工事がしやすい天井裏のスペースに新しい配管を施工することも可能です。また共用部の給水管・給湯管の立管は、各世帯の水道やガスメーターがあるパイプシャフト内を通っていることが多く、住民不在でも交換できます。

ところが、排水管となると交換工事のハードルが高くなります。専有部の排水管は一定の勾配をつける必要があるため、給水管のように天井を通すことができず、床をはがして交換するか、床を底上げして新しい排水管を通す工事が必要となるからです。スラブを貫通して階下の天井の上を横引き管が配管されている場合もあります。これらは大がかりな工事となり、高額になります。また、共用部の排水管の立管は、各住戸の部屋の中に1本~3本通っているので、壁を取り壊して交換しなければなりません。その場合、たとえば、1階の106号室から最上階の1206号室まで、6号室系統の全12世帯に工事期間中は在宅いただく必要があります。

さらに、配管保全をしていない築50年を過ぎたマンションでは、高圧洗浄によって老朽化した配管が破損して水漏れが起きる可能性があることから、業者から高圧洗浄を断られるようになります。そうなると、サビによる水漏れ事故と、排水管が詰まって水があふれ出す事故と、どちらのリスクも高い状態になるといえます。

これまで述べてきたように、排水管の交換工事はかなりハードルの高い修理作業であり、修繕積立金不足が深刻な管理組合さんにとっては、交換したくてもできずに、大きなリスクを抱えながらの生活を強いられることになりかねません。配管保全センターでは、できるだけ低コストで排水管の保全を行うご提案もしています。お気軽にお問い合わせください。

空室が増えてると修繕積立金不足になる可能性も

マンション内に空室が1室以上ある割合は、築40年以下のマンションでは半分以上で、築40年以上では7割近くでみられるといいます(国交省:平成30 年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状 3ページ)。空室状態が長く続き連絡先不明となった部屋からは、修繕積立金を徴収できません。空室が埋まらない⇒積立金不足から大規模修繕をしたくてもできない⇒老朽化から相続放棄が増えるという悪循環に陥ることになりかねません。こうならないためにも、修繕積立金は節約しながら、適切な修繕や保全をすることが望まれます。

この先、何年まで住み続けるか

当然のことながら、建物の高齢化とともに世帯主の高齢化も進みます。築40年以上のマンションになると、「まだまだ何十年も住み続けたいからまめに修繕をしたい」という住民がいる一方で、「子供は別のところに住んでいるし、なるべく修繕にはお金かけたくない」といった住民も多くなり、相いれない意見を持つ住民が共生することになります。下に国交省「マンション管理の基本と改修による再生の重要性」の4ページから抜粋して載せていますが、マンションの性能・機能をグレードアップする「改良」工事の費用は築年数がたつほどかかるのがわかります。

早くから管理組合で、「築〇〇年でマンションを解体・売却する」と決めておけば、大規模修繕をするか、しないかの決断もしやすくなり、健全な管理運営ができるでしょう。「何年まで住み続けるか」の合意をせずに、築年数が進んだ場合、配管保全も含めた適切な管理運営は難しく、最終的にはスラム化へと進んでしまうことさえあるといえます。

積立金不足で耐震補強対策ができない

  • 耐震補強
  • 1981(昭和56)年6月1日以降、新耐震基準が適用されるようになりました。そのため、それ以前の旧耐震基準で建てられたマンションは、新たに耐震補強をする必要が出てきましたが、場合によっては世帯当たり何百万円もかかる工事のため、「耐震審査を受けない」「審査を受けても補強対策をしない」マンションがかなりの割合で存在しています。新耐震基準を満たしていないマンションでは、新規購入で入居する住民もなく、次第に空室が増えて、いずれは解体・売却の決断を迫られることになるでしょう。とはいえ、「いつ解体するのか」といった合意も得られず、先が見えないままで住み続けるマンション住民が多いのも現状です。
    一方で、耐震補強費用がかなり安くなり、あきらめていた新耐震基準をクリアできるマンションも増える傾向にあるようです。
    耐震改修費用が当初の1/10以下になったのはなぜ? マンションコミュニティ研究会 廣田信子さんのブログより

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