2026年10月29日
この記事のカテゴリー : 漏水に関する保険

まず、管理組合として保険の契約更新を行なったり他社への切り替えをするときの注意点についてです。
今回の改定では、築年数が古いほど保険料の値上げ額が大きくなる保険会社もあれば、築年数が新しく、漏水等の事故も起きていないマンションでは、かなり保険料が安くなる会社もあり、さまざまといえます。
ある保険代理店が東京都内の築50年を超える25世帯のマンションで試算した例があります。
補償の内容をそろえて5年分の保険料を比べると、安い会社で約109万円、高い会社では300万円を超えました。同じ補償で、3倍近い差があります。
これだけ差があると、1社か2社に見積りを取り、たいして比べることもなく決めてしまうのは、大変もったいないことと言えます。
また、管理会社が保険代理店を兼ねている場合、扱っている保険会社が限られていることもあります。
どの管理会社もそうだとは言いませんが、保険の更新手続きを管理会社に任せきりにしていると、他の保険会社と比べる機会もないまま更新されてしまうこともあるかもしれません。
このようなことを回避するには、大手の保険会社の保険をひと通り扱い、管理組合の側に立って比べてくれる保険代理店に見積りを頼むとよいといえます。
信頼できる保険代理店を選ぶには、後ほどご説明する保険金額の決め方や事故件数といったことまで説明してくれるかどうかが、一つの目安になります。
もう一つ大切なのが、契約を切り替えるタイミングです。
配管の工事をして漏水の心配が減ったあとに見積りを取ると、査定がよくなり、保険料が下がることがあります。
また、後でお話しする事故の件数を数える期間も、保険切り替えの時期によってずれます。
満期にこだわらず、どの時期に切り替えるのが得か、代理店と相談しながら判断することをおすすめします。
次に、保険金額と免責をどのように決めるかです。
保険金額を決めるときの基準になるのが、建物の共用部分の評価額です。
評価額とは、その建物を今建て直すとしたらいくらかかるかという金額のことで、古くなって建物の価値が下がっていくという考え方とは異なります。
最近は工事費が値上がりしていますので、評価額は下がるのでなく、上がっていきます。
そのため、評価額に対して何割分の保険をかけるかという考え方のままでいると、評価額が上がるたびに保険金額も上がり、保険料もどんどん高くなっていきます。
大切なのは、評価額の割合で考えるのではなく、保険金額そのものをいくらにすべきかを考えることです。
評価額いっぱいまで保険をかけておかないと心配かというと、そうとも限りません。
鉄筋コンクリートのマンションが火事で丸ごと焼けてしまうことは、まずありません。
地震による損害は、そもそも地震保険で備えるものです。
保険金額を評価額より低くしても、漏水等の実際によく起きる損害であれば、受け取れる保険金は変わらないことが多いと言えます。
こうしたことから、評価額いっぱいまで保険金額を設定する意味は、ほとんどのマンションで薄いと考えられます。
なお、地震保険に入る場合は注意が必要です。地震保険は、火災保険の保険金額の30%から50%までしかかけられません。
保険金額を下げると、地震保険の上限も一緒に下がりますので、その点は代理店とよく相談してください。
免責額の決め方も大切です。免責額とは、事故が起きたときに管理組合が自分で負担する金額のことです。
たとえば免責額を10万円にしておくと、損害が30万円なら保険から20万円が支払われ、残りの10万円は管理組合の負担になります。
損害が10万円以下なら、保険は使えず全額が自己負担です。
免責をゼロにしておくと、どんなに小さな事故でも保険が使えるので、安心に見えます。
ところが、保険金を受け取った件数が増えると、次の更新で保険料が大きく上がります。
数万円、数十万円の保険金を受け取ったために、次の保険料が百万円単位で上がるという逆転現象が、実際に起きています。
免責をある程度設定しておけば、その分だけ保険料そのものが下がります。
さらに、少額の事故は自己負担で済ませることになるため、保険金を受け取る件数が増えるのを防げます。
小さな事故は自分たちで払い、大きな事故に保険を使うというのが、保険料を長く安定させる考え方です。
保険金額も免責も、目先の保険料だけでなく、事故が起きたときに実際にいくら負担することになるかまで含めて、実質で考えることが大切です。
続いての加入時の注意点は、保険加入時に付ける特約の中身をきちんとチェックするということです。
一つ目は、「個人賠償の包括特約」についてです。
これは、住民の皆さんが日常生活で他人にケガをさせたり、物を壊したりしたときの賠償に備える保険を、管理組合がまとめてかけておく特約です。
多くの保険商品の特約では、マンションの敷地の外で起きた事故にも使えます。
ここで最近、問題になってきているのがその使われ方です。敷地の外での自転車事故などにも使えるため、一部には、保険金を不正に受け取ろうとするような使われ方をされるケースもあります。
そうした請求でも、管理組合の側からは断りにくく、保険金が支払われれば管理組合の契約の事故件数が増えてしまいます。
結果として、ほかの住民の皆さんが不利益を被ることになります。
最近は、適用を敷地内の事故に限った包括特約も出てきています。
保険料が大きく下がるわけではありませんが、敷地外での事故に使われることを防ぐという意味では、検討する価値があります。
二つ目は、「外壁からの雨漏り」についてです。
2026年1月、最高裁はマンションの共用部分の不具合で起きた漏水などの被害に関して、原則として管理組合が賠償責任を負うという判断を示しました。
これには外壁や屋上からの雨漏りも含まれます。
通常、管理組合では共用部が原因で起きた事故に備えて、施設賠償の特約に加入していますが、このような外壁の劣化による雨漏りを施設賠償の特約で補償してくれるかどうかは、保険会社によって異なります。
補償する会社もありますので、これは見積りのときに確認しておきたいポイントといえます。
三つ目は、「漏水の原因を調べるための調査費用特約」についてです。
年間で100万円までという保険会社もあれば、1件ごとに100万円まで、何件でも使えるという会社もあります。
加入時の注意点の最後は、水災の補償についてです。
2026年8月に起きた千葉県の豪雨では、地下の電気設備が浸水して停電や断水が起きたマンションが、県内で38棟に上ったと報じられています。
受水槽があるマンションでは、ポンプも電気で動いていますので、電気が止まれば水も止まります。
豪雨で下水や排水路があふれる浸水のハザードマップに入っている地域で、地下に電気設備がある場合は、水災の補償を付けるかどうかを特に慎重に検討してください。
また、地下の電気設備のうち、キュービクルと呼ばれる受変電設備は、建物ではなく設備ですので、保険金額を決めるときにその修理費が考慮されていないことが多くあります。
管理組合が所有するキュービクルが豪雨で壊れるおそれがある場合は、その設備も保険金額に加えておくよう検討してください。
また、豪雨のときに1階でなく2階や3階といった部屋のベランダの排水口から水があふれ、掃き出し窓を超えて部屋の中まで浸水する場合もあります。
排水口に植木鉢の土や落ち葉などが詰まっていたなど、浸水の原因は住民側の落ち度の場合が多いのですが、共用部の植栽の落ち葉によって排水口が詰まっていたといった場合は、管理組合の責任になることもあります。
その場合に管理組合が加入している施設賠償の特約で補償が出るかどうかは、会社によって扱いが違いますので、見積りのときに確認しておくと安心です。
ここからは、保険を使うときの注意点です。
管理組合が加入する保険では、一定の期間に保険金を受け取った件数によって、次の期間の保険料が決まります。
この場合、カウントされるのは事故が起きた日ではなく、保険金を受け取った日になります。
期間については、満期の半年前、途中で切り替える場合は切り替える日の半年前から遡って2年間としている会社が多く、1年間で見る会社もあります。
先ほどの25世帯のマンションの例では、この件数が0件から1件に増えるだけで、ある保険会社の保険料は約167万円から約253万円に、別の保険会社では約224万円から約344万円に上がりました。
2件になると、400万円から500万円台になり、さらに、保険の引き受けを断る保険会社も出てきました。
一番安かった保険会社は、2件までは保険料が変わりませんでしたが、3件になると引き受けができないという結果でした。
世帯数50戸以下の小規模マンションでは、割合ではなく件数そのもので判断する保険商品もあり、1件の重みがさらに大きくなります。
また、保険料は据え置く代わりに、賠償の特約を外したり、契約を5年ではなく1年に限ったりする形で条件を厳しくする保険会社もあります。
先ほどの調査費用特約も同じです。漏水の原因調査は、10万円から30万円ほどで終わることが多いのですが、そのために保険を使って件数が1件増え、更新時の保険料が100万円値上がりしたら意味がありません。
少額で済みそうなときは、保険を使わない判断も必要です。
また、保険金の額は保険会社の査定で決まります。
損害額が保険金額の範囲に収まっていても、保険会社に請求する保険金の内訳が実際の損害と合っていなくて、他の部屋のリフォーム代も請求しているような場合は、その分は支払われません。
最近は、保険会社が依頼した鑑定人が現場を確認することも増えています。
保険金が決まる前に、業者の見積りどおりに工事を始めてしまうと、査定で減らされた分を管理組合が負担しなければならなくなることもありますので、注意してください。
ですから、理事会で、すでに保険金を受け取った漏水事故などを一覧にして把握しておき、事故が起きた時に、保険を使うのか使わないのかを、その都度判断することが大切です。
事故を起こした方の個人賠償保険や、被害を受けた方の火災保険を組み合わせて、管理組合の保険を使う回数を減らす工夫もできます。
どの管理会社もそうだとは言いませんが、更新時の保険料が高くならないように取り計らってくれるところは、多くないのが実情です。
管理組合としては「自分たちの身は自分たちで守る」という意識が大切ですし、住民の立場から考えてくれる、親身になってくれる保険代理店と契約するのが望ましいと言えます。
最後に、包括特約をやめる場合の注意点です。
個人賠償の包括特約の保険料が高すぎて、管理組合では負担しきれないといった判断で、包括特約をやめる場合は、住民の皆さんにそれぞれ個人賠償保険に入ってもらう必要があります。
周知しないままやめてしまうと、漏水が起きたときに大きなトラブルになりかねません。
特に注意したいのが、部屋を貸している外部オーナーの方です。部屋を貸すことは事業を営んでいるという扱いになるため、その部屋の配管からの漏水は、個人賠償保険では補償されません。
オーナーご自身で施設賠償保険に入っておく必要があります。
海外にお住まいのオーナーなど、連絡が届きにくい方もいらっしゃいますので、案内を送るだけでなく、きちんと加入しているかどうかまで確認しておくことをおすすめします。
