2026年9月9日
この記事のカテゴリー : 修繕積立金・専有部の取り扱い

まず、いちばんもめるのが、リフォームで良い仕様にグレードアップして、転居してまだ1年か2年程度しか経っていないお部屋の住民の方とでしょう。
管理組合が一斉に工事をする場合、配管取替え後の内装の復旧は全戸同じ標準仕様になります。
いわゆる量産品のクロスと、クッションフロアです。全戸を同じ条件で無駄なく進めるには、そうならざるを得ません。
この場合、「なぜ、うちの内装をわざわざその仕様にするのか。転居時の高級仕様に戻したいだけなのに、なぜ差額が自己負担なのか」といったクレームになりがちです。
お気持ちは、よくわかりますね。「せっかくお金をかけたものを壊されて、それより安い床材や壁紙を貼られて、元に戻したければ自腹だ」という話に聞こえますから。
ただ、ここで例外を作ると収拾がつかなくなります。
標準仕様までは組合負担・それを超える分は自己負担という線引きは崩せないということです。
こういったもめ事を回避するには、あらかじめ管理組合で、「リフォームのガイドライン」を作っておくことが有効です。
専有部をリフォームされる際には、給水管と給湯管、場合によっては排水管を、管理組合が指定した配管材に全て取り替えていただく。
これをルールにして、リフォームの申請の段階で、そのことを確認するということです。
こうすることで、これからリフォームをされる住戸は、その時点で配管は更新済みになります。
何年か後に一斉更新をすることになっても、新しい内装を壊す必要はありません。
なお、この決まりは、これからリフォームしようとしている再販業者さんにも伝わるようにしておくことが大切です。
配管が古いまま内装だけ新しくして売られますと、購入された方が何も知らないまま、1、2年後に工事の対象になってしまいます。
そのためには、このルールの根拠を、管理規約に定めておいてください。
売買の重要事項説明では、規約に専有部分の利用の制限について定めがあるときは、その内容を説明することになっています。
規約に書いてあれば、買われる方にも伝わりやすくなります。
そして、この取り決めをしておきますと、仮に組合主導の一斉更新がまとまらなかった場合でも、リフォームのたびに各戸の配管が新しくなっていきます。
それだけで十分とは申しませんが、決めておいて無駄になることはありません。
次に必ず出てくるのが、うちは自腹で配管を替えたのに不公平ではないか、というご意見です。
もっともですので、補償の制度は必ず用意する必要があります。
問題は、金額の決め方です。「部屋が広いから高かった」「うちは最近取り替えたので、昔に取り替えた部屋より高くついている、だからもっと補償金を増やすべきだ」
こういったことを聞き始めると、まず話がまとまりません。
基本的には、一律でいくら、と決めてしまって合意形成するほうが、話がまとまりやすいです。
厳密に公平を目指すほど、話は止まってしまいます。
3つ目は、部屋の広さによって今回の一斉更新を行う工事費用を変えるのかということです。
狭い部屋も同じ金額なのはおかしい、といった意見が必ず出てきます。
ここも、細かく設定しすぎないほうが、話はまとまりやすいです。
部屋のタイプごとに工事費用を変え始めますと、それぞれのお立場からご意見が出て、議論が収束しなくなります。
わかりやすいのは、例えば、どのタイプでも一律70万円と決めるということです。
一律にすると、必ず割高になる方が出ます。それでも、話を前に進めなければなりません。
理事会としては、腹を決めていただく場面になります。
4つ目です。「工事のあいだ、どこかに引っ越さなくてはいけないのでしょう?」というご心配ですが、これは誤解であることが多いです。
専有部の給水管と給湯管の取替えは、各戸2日程度で終えられることのほうが多いです。
断水は1日だけで、夕方にはキッチンもお風呂もトイレも、いつもどおりお使いいただけます。
内装の仕上げまで行う工法でも、2日目で完了となります。
準備いただくのは、水回り周辺の荷物を少し動かしていただく程度で、引っ越しは不要です。
これに関しては、理事会が実際の「日程と断水の時間帯」を具体的にお示しになりますと、反対の声は静まることと思います。
5つ目が、保険の話です。「漏水が起きても保険で直せるのだから急ぐ必要はない」とおっしゃる方がいますが、保険は、使えば使うほど保険料が高くなりますし、場合によっては、保険会社から契約更新を断わられて、保険に加入できなくなります。
私どもがうかがっている範囲では、損害保険会社の目安として、今のところ査定期間の2年間で、世帯数の7パーセント程度で事故が起きて保険金を受け取ると、警戒される水準になってくるようです。
100世帯であれば7件くらいです。また、損害率も大切です。
5年の契約期間で、支払われた保険金が保険料の200パーセントに達しますと、次の更新ができにくくなるといったことがあります。
また、保険を適用したとしても、保険でカバーできる範囲には限界があり、パソコン内のデータや、思い出のプレゼント等に損害がでると、保険で補償できずに揉めることになりかねません。
すべての保険会社が同じ基準というわけではありませんが、「保険があるから大丈夫だ」という前提は、通用しなくなるといえます。
6つめは、お金の手当ての話です。
「配管の更新そのものには賛成だが、そのために修繕積立金を値上げするのは反対だ」このご意見は、非常に多いです。
「借入までしたら資産価値が落ちてしまう」という言い方をされることもあります。
まず、なぜ値上げの話になるのかを、ご説明します。
そもそも、専有部の配管の更新費用は、多くの場合、長期修繕計画には入っていません。
長期修繕計画は共用部の工事を前提に組まれているからです。
ですので一斉更新をしようとすると、その分の費用は、まるごと足りなくなるということになります。
積立金が不足するのは、避けられないということです。
そこで、長期修繕計画を作り直すことになります。計画を作り直せば、当然、積立金をいくらにするかという話になります。
最近は工事費が上がり続けています。ここ2年では、毎年5パーセントから10パーセント上がっています。
この傾向は、人手不足といった構造的な問題ですので、当面続く可能性が高いです。
もともと多くの管理組合では積立金が足りていないところに、この値上がりが重なりますので、値上げ幅はかなり高くなることが想定されます。
また、一斉更新を行うために、管理組合として金融機関から借入を行うという手もあります。
住宅金融支援機構が扱っている「マンション共用部分リフォーム融資」は、返済期間10年の場合、今年の9月の時点では、利息はおよそ1.5パーセントとなっています。
結局、借入の利息よりも、更新を先送りしているあいだの値上がり率のほうが大きいことになりますので、配管を更新するなら今が、いちばん安いということになります。
借入をすると資産価値が落ちてしまうと考える方はとても多いですが、これは、逆ではないかと思っています。
借入をして配管を更新した建物と、借入をせずに配管を放置して漏水を繰り返している建物と、買い手の方がどちらを選ばれるか。
ここを考えていただきたいと思います。配管を放置して漏水のリスクが年々高まっていくことのほうが、よほど資産価値の低下につながります。
放置したために漏水が頻発してしまうような場合は、買い手がつかなくなってしまいます。
修繕積立金の値上げはハードルが高いですが、一方で、外壁塗料や防水塗料に高耐久材料を使うことで、大規模修繕周期を18年以上に延ばすといった取り組みもできるようになりました。
そのように積立金を温存する工夫をして、修繕積立金の値上げを最低限に抑える努力をしながら、長期修繕計画を作り直します。
その後、出来上がった新たな長期修繕計画を住民に示して、賛同を得るといった活動が肝要となります。
最後は、「自分はもう高齢だから、あと何年ここに住むかわからない。私が生きてるうちは、そこまでしなくてもいいです」というご意見です。
管理組合の主導で一斉更新せずに、区分所有者の方にお任せにした場合を考えてみましょう。
築年数が古くなるほど、年金で生活されている方が増え、マンション全体の資金力は下がります。
また、滞納も増えはじめ、相続の際に引き継ぎたくないと放棄されるケースも出てきがちです。
配管を直せていないと、「あそこは漏水が多いマンションだ」という評判が定着してしまいます。
私どもは、築60年以上になるマンションも数多く拝見しています。
区分所有者の方にお任せにしてこられた管理組合でうかがうのは、「あのときにやっておけばよかった」という後悔のようなお話です。
漏水が続くマンションは、資産価値が下がるどころではなく、買い手がつかず売れなくなるので、しまいには資産価値がゼロになっていってしまいます。
仮に老人ホームに入るために住戸を売ろうとされたときに売れず、身動きが取れなくなる。
そういうお話を、実際にうかがっています。先送りは、次の世代のためにも、ご自身のためにも、なりにくいのではないかと考えています。
修繕積立金が値上げとなったとしても、資産価値がほとんどなくなってしまい数千万円を損するよりも余程いい。ということに気づいてもらえれば賛同は得やすくなります。
