2026年4月21日
この記事のカテゴリー : 配管に関する知識

今回ご紹介する事例は、あるマンションで数か月にわたって住民を悩ませた「謎の異音」——その調査と解決までの経緯をお伝えします。
ウォーターハンマーとは異なるケースですが、異音トラブルへの対処という観点ではとても参考になる内容です。
原因を突き止めるための管理組合としての動き方や調査の進め方は、音の種類が違っても共通しているからです。
ぜひ最後までご覧ください。
いかがでしょうか。先ほどご説明したウォーターハンマーの「ドン」「ゴン」という音とは明らかに違う、どこか電子音に近い「ポーン」という音です。
「これ、電気系統や機械から鳴っているんじゃないか」——そう感じた方も多いのではないでしょうか。
実際、この音を最初に聞いた管理組合も、同じ印象を持ちました。
この音が最初に鳴り始めたのは、今から数か月ほど前のことでした。
最初はそれぞれの家で変な音がするなと思っていた程度の状態が数か月続きました。
その後ふとしたことで、一人の居住者が「変な音がする」と周囲に話しかけたことがきっかけとなりました。
すると「私も聞こえていた」「うちでも気になっていた」という声が次々と上がり、気づけばマンション全体の話題になっていきました。
しかも、その音は毎日聞こえ、一日の中で何度も不定期に鳴るという厄介なものでした。
いつ鳴るかわからない、何度も聞こえてくる——そんな状況が数か月にわたって続き、住民のストレスは少しずつ積み重なっていきました。
居住者の多くが「ポーン」という電子音に近い音と証言していたことから、管理組合と管理会社がまず疑ったのは電気系統とエレベーターでした。
「電子音みたいな音なら、電気関係ではないか」というのは、ごく自然な発想です。
そこで、電気設備とエレベーターをしらみつぶしに点検しました。ところが、どこにも異常は見つかりません。
点検した業者も首をかしげるばかりで、「原因不明」という結論になってしまいました。
それでも原因追及を諦めるわけにはいきません。管理組合として次の手を打つ必要があります。そこで取り組んだのが、全戸へのアンケート調査でした。
「どんな音か」「いつ頃聞こえるか」「どの部屋で聞こえるか」——こうした情報を丁寧に集めた結果、以下のような集計結果が出てきました。
このマンションは、13階建て東・西の2棟で合計約140世帯ですが、まず、西棟の全世帯約60軒では異音の報告が1件もなく、音を認識していた住戸はすべて東棟に集中していました。
東棟全約80軒のうち、約3分の1以上の住戸が音を認識していたことになります。
さらに、東棟内には3台のエレベーターがあり、01・02号室の1号機、03・04号室の2号機、05・06号室の3号機と分かれており、3つの縦系統別に分布を見ると、音が聞こえると答えた住戸は特に1号機の系統に多いという偏りが見られました。
しかし、集計結果をまとめたものの、この分布が何を意味するのかまではわかりません。
電気・機械系統の調査も空振りに終わり、管理組合としてどこに相談すればいいかわからない状態になっていました。
藁にも縋る思いで弊社・配管保全センターに連絡が入ったのは、そのタイミングでした。
弊社がアンケート結果を確認し、この偏りは給排水設備に原因がある可能性が高いと判断しました。
発生源を特定するため、該当系統の20戸を一軒ずつ調査する方針を提案しました。
いざ20戸すべてに対して調査するとなると、対象となる20戸全戸の住民との日程調整が必要であり、それぞれの部屋で調査員の指示に合わせて各水栓を開閉してもらいながら異音を確認していくという作業になります。
管理組合として、この大変な調査に着手しようとしていた、まさにその矢先のことでした。
ある熱心な住民の方が、YouTubeで手掛かりがないかと探した結果、マンションで聞こえていた音と非常によく似た音が収録された動画を見つけました。
その動画によると、その音は減圧弁の不具合によるものでした。
ほかの原因の可能性もゼロではありませんが、聞こえる音がかなり似ているので、原因を減圧弁と仮定し、もし全室調査を行っても発生源が特定できない場合は、該当系統の全戸の減圧弁を交換するという選択肢も浮上してきました。
その頃から住民の方々も「もしかしたら自分の部屋から音が出ているかもしれない」と意識して水道を使うようになりました。
すると、一人の住民の方から「水を使う際に音が聞こえるので、もしかしたらウチかもしれません」という申告がありました。
この自己申告をきっかけに、20戸の全室調査ではなく、まずその1室を組合で調査しようということになりました。
弊社はすぐにあることに気づきました。水栓を開けた瞬間に異音が発生している一方で、水栓を閉めたときには音が鳴っていないのです。
水栓を占めたときに音が鳴るのであれば、ウォーターハンマーによる異音が発生しているとも言えますが、蛇口を開いたときに異音が鳴るのであれば、ウォーターハンマーではなく、減圧弁本体が異音の発生源の可能性が高いと判断しました。
後日、業者が該当の部屋を訪問し減圧弁を交換したところ、それまで続いていた異音がぴたりと止まってくれました。
さらに、撤去した減圧弁をメーカーに確認してもらったところ、減圧弁本体の内部に詰まりが確認されました。ここに至ってようやく原因が特定できました。
これにより、20戸すべてを調査する必要はなくなりました。そして全戸の減圧弁を交換するという話も、この1戸の交換だけで済むことになりました。
音の問題は解決したとはいえ、配管保全に関してこれで完全に安心できるとは言い切れません。
減圧弁のメーカー推奨交換年数である8~10年をはるかに超えた状態での使用が続いています。
また、水道メーターや減圧弁は銅とスズの合金で、接続する給水管はライニング鋼管で異なる金属同士が接触しています。
このような異種金属接触の箇所は腐食が進みやすくとても漏水の可能性が高いため、今後も何らかの不具合が起きる可能性は十分に考えられます。
結論として、各住戸の減圧弁の交換やメーターユニット化、共用部配管の更新工事は、いつかは手をつけなければならない避けて通れない課題といえます。
工事費用は今後も値上がり傾向が続くことが予想されており、早めに対応することが結果的にコスト削減にもつながります。
今回の事例、異音トラブルへの対処方法としてお伝えしてきましたが、本当にお伝えしたかったのは別のことです。
減圧弁の不具合という原因そのものよりも、それを突き止めるまでの過程——管理組合の問題をないがしろにしない姿勢や、住民一人ひとりの意識の高さこそが、今回の解決を生んだ本質だったと思っています。
まず、熱心な理事の方々が「原因不明」という結論に納得せず、粘り強く調査を続けました。
その全戸アンケートに対して、住民の回答率が高かった。住民一人ひとりが問題を自分ごととして受け止めていた証拠です。
さらに、理事の方々が調査の進捗を住民に発信し続けたことで、住民の側に「もしかしたら自分の部屋かもしれない」という意識が芽生えました。
その結果生まれた一人の住民の自己申告が、20戸の全室調査という大がかりな作業を丸ごと省略し、解決を一気に引き寄せました。
組合が動き、住民が応え、住民の気づきが組合の調査を助ける。この循環こそが、今回の解決の本質でした。
知識や技術は、外から借りられます。でも、組合一丸となって動く意識は、そのマンションの中にしか育てられません。
配管保全センターでは、配管の材質や、あと何年住み続けるか、修繕積立金の状況などを総合的に判断し、最適な配管の保全方針を無料でアドバイスしています。
ご興味のある方は、配管保全センターにお気軽にお問い合わせください。
