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配管工事に断固反対! 管理組合が反対者に書かせるべき誓約書の中身

2026年3月5日
この記事のカテゴリー : 修繕積立金・専有部の取り扱い

排水立管の取り替え工事を進めようとすると、必ずといっていいほど出てくる反対意見があります。

例えば、「部屋をフルリノベーションして入居したばっかりです。床も壁も綺麗に全部やり直したのに、配管工事なんて、とんでもない」といった意見ですね。

そもそも排水立管の取り替えは、トイレや洗面所、キッチンといった水回りの壁や床を一度壊して配管を交換し、その後内装を復旧するという工事になります。

しかも、管理組合が負担する内装復旧の範囲はあくまで「量産品のクロスやクッションフロアでの原状回復」が基本です。

それ以上の仕様、たとえばリノベーションで使ったタイルや無垢材に戻したいという要望には対応できず、高級仕様にするための差額は自己負担になります。

「せっかくフルリノベしたばかりなのに、工事で壊された挙句、なんで自分が追加費用を払わないといけないの?」そう感じるのは、正直、無理もない話です。

理事会が提案してきたことは、理不尽だと思う気持ちはよくわかります。

実際、排水立管の工事で反対者がゼロというマンションは、まずありません。

それほど、この問題はどこにでも起こりえる「あるある」なんです。

そして、その反対をそのまま放置してしまうと、後から管理組合が非常に苦しい立場に立たされます。

また、マンション全体の資産価値の大幅な低下につながりかねません。

今回は、「断固反対」の住民が出た場合に管理組合が必ず、その断固反対者から取得しておくべき誓約書の中身についてお話しします。ぜひ最後までご覧ください。

1.まず押さえておきたい前提

誓約書の中身に入る前に、一つ確認しておきます。

マンションの排水立管は、専有部分の中を通っていても「共用部分」の扱いになります。

共用部分の更新工事は管理組合の権限であり、区分所有者にはその工事に協力する義務があります。

今年4月に施行された改正区分所有法でも、「区分所有者の相互協力義務」が法律に明記され、「自分の部屋だから好きにできる」という主張は法的に通りにくくなっています。

つまり、リノベーション済みであることは工事を拒否する「正当な理由」にはなりません。

ただ現実には、強引に進めれば感情的なトラブルに発展することもあります。

話し合いを重ねた末に「今回の工事は、その断固反対者の部屋に限っては見送る」という判断をした場合、管理組合として絶対にやっておかなければならないのが「誓約書の取得」です。

2.口頭の約束・議事録では不十分な理由

「口頭で約束した」「議事録に残してある」という管理組合もありますが、それでは不十分です。

まず、後から「そんな話は聞いていない」と言われるリスクがあります。

時間が経てば記憶は曖昧になりますし、理事会メンバーが変わることもあります。

次に、部屋が売却された場合に次の所有者へ引き継げません。

口頭の約束も議事録も、新しい買主を縛る効力はありません。

そして、漏水が起きた際に責任の所在が曖昧になります。

誓約書がなければ「管理組合の責任だ」「保険を使え」と言われたとき、管理組合側が非常に不利な立場に置かれます。

だからこそ、誓約書として書面でサインをもらうことが必要です。

3.誓約書に盛り込むべき5つのポイント

ポイント① 「共用部分と知った上で、自分の意思で拒否した」という確認

誓約書の冒頭に必ず入れるべき一文です。

「共用立管は管理規約上、管理組合が管理・保全責任を負う共用部分であることを理解した上で、自らの都合により工事を拒否した事実を確認します」この確認があるかないかで、後々のトラブル時の責任の所在が全く変わります。

「知らなかった」「聞いていなかった」という言い逃れを最初に封じておくことが目的です。

ポイント② 修繕積立金の減額措置で「不公平感」を解消する

工事を受け入れた他の住戸は、修繕積立金から費用を出してもらい配管を新しくしてもらいます。

ところが工事を拒否した住戸は、同じ積立金を払いながらその恩恵を受けません。

この不公平を放置すると、後から断固反対者から不満が出てくる可能性が高いです。

ということで、工事費相当額を一定期間、修繕積立金から減額するという措置を取ることも選択肢のひとつです。

誓約書には「月額〇〇円を〇〇ヶ月間減額する(総額〇〇万円)」と具体的な数字を明記します。

ただしこの減額は、あくまで「費用負担の公平性を保つための措置」です。

次のポイント③④で説明する「将来の保全責任と費用負担を自分が単独で負う」ことの対価である、という位置づけを書面に明記しておくことが大切です。

ポイント③ 将来の修理・交換費用は全額自己負担

今回工事を断った分、その配管は古いままになります。

今後、漏水・詰まり・破損等が発生した場合の修理・交換費用は、全額その住戸の区分所有者が負担することを明記します。

また、修理工事を行う際は管理組合の指示および指定する仕様に従うという条件も入れておきましょう。

「自分で勝手に安い業者を入れて、粗末な修理をされた」という事態を防ぐためです。

ポイント④ 保険は使えない。損害賠償も原因調査費用も全額自己負担

今回工事を拒否した配管が原因で下の階に漏水被害が出た場合、損害賠償は全額その区分所有者が負担することを明記します。

そして、管理組合が加入しているマンション総合保険の適用は求めない、または適用対象外となることも合わせて確認しておきます。

加えて、見落としがちなのが「原因調査費用」です。

漏水が起きた際に「本当にこの配管が原因なのか」を調べる費用も自己負担とする旨を入れておかないと、調査の段階からまた揉めることになります。

「個人賠償保険に入っているから大丈夫」と思っている方も多いですが、経年劣化が原因の漏水は個人賠償保険でも支払われないケースが増えています。

保険があるから何とかなる、という前提が崩れてきていることも、誓約書を取得する場で伝えておくといいでしょう。

ポイント⑤ 売却・譲渡の際は次の買主に必ず引き継ぐ

誓約書の中でもっとも見落とされやすく、かつもっとも重要な条項です。

今回誓約書を取った方が数年後に部屋を売却した場合、買主は「私は知らない」と主張できてしまいます。

それを防ぐために、誓約書に売買の際の継承条項として以下の4点をセットで入れておきます。

一つ目は、売却・贈与・譲渡の際には重要事項説明等を通じて誓約書の内容を買主に漏れなく説明すること。

二つ目は、誓約書の義務と責任を買主が承継することを売買契約の条件とし、承諾なき譲渡は行わないこと。

三つ目は、修繕積立金の減額期間が残っている場合、その残存分の利益も新所有者に引き継がれること。

四つ目は、譲渡完了後に新しい区分所有者から管理組合に対して同内容の誓約書を再提出させること。

この4点が記載された誓約書にすることをお勧めします。

4.誓約書の引き継ぎをより確実にするために——管理規約の整備という選択肢

ポイント⑤でお話しした「承継条項」を誓約書に入れることは大切です。

ただ、誓約書はあくまで当事者間の契約です。

売却の際に前の所有者が承継条項を守らず、買主への説明を怠ったまま売買が完了してしまった場合、新しい所有者を法的に縛れるかどうかは、正直なところ不透明な部分があります。

法的解釈については弁護士によっても見解が異なる可能性もあり、現時点で「必ず有効だ」と断言できるものではありません。

では、「知らなかった」という事態をより確実に防ぐにはどうすればいいか。一つの有効な手段として、管理規約の整備が考えられます。

管理規約の内容は、新たに区分所有者となった方にも当然に効力が及びます。

つまり、「工事を拒否した住戸を売却する際には、誓約書の内容を重要事項説明書に記載し、買主に開示することを義務づける」旨を管理規約に定めておくことで、「知らなかった」という状況を作りにくくすることができます。

ただ、この方法にもいくつか現実的な壁があります。

まず、特別決議のハードルです。

管理規約の変更には、区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成が必要です。

これは普通決議よりも高いハードルで、住民の合意形成に相当な労力がかかると言わざるを得ません。

次に、運用面での担保の問題です。管理規約に定めたとしても、実際の売買の現場でそれが漏れなく守られるかどうかは別問題です。

売主や仲介業者が規約の存在を見落とす、あるいは意図的に無視するといったリスクは残ります。

管理組合として、売買が発生した際に確認できる仕組みを別途整えておくことも必要になります。

そして、重要事項説明との関係です。管理規約で重要事項説明にその記載内容を直接義務づけることが法的にどこまで有効かという点については、専門家の見解を確認することをお勧めします。

こうした限界はあるものの、「誓約書だけに頼る」よりも「誓約書+管理規約の整備」という二重の備えを持つことは、管理組合としての対応力を高める上で意味のあることだと考えます。

取れる手を一つひとつ積み重ねることが、結果的にマンション全体を守ることにつながると考えます。

クロージング

今回お話しした誓約書の5つのポイントを改めて整理します。

「拒否した事実の確認」「修繕積立金の減額措置」「将来の修理費は全額自己負担」「保険は使えない・損害賠償も原因調査費も自己負担」「売却時の承継の仕組み」の5つを必ず盛り込むこと。

そしてさらに確実を期すなら、管理規約の整備という選択肢も視野に入れること。どれか一つでも欠けると、後々のトラブル対応で管理組合が苦しい立場に立たされます。

このように、「リノベ済み住戸については排水立管の取替え工事をしない」とした場合、リノベ済み住戸にとっても、管理組合にとっても手間が増え、お互いの合意までに時間がかかることがおわかりいただけたかと思います。

配管保全センターでは、こういったことも視野に入れて、配管の保全のご提案をしておりますので、お気軽にお問合せください。
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